HG JAGER 制作記 ~ フォーク編
前回に引き続き、HG JAGERの制作の模様。
フレームは出来上がったので、最後にフロントフォークだ。
ここまで、けっこう専門的な内容で
記事を書いてきたが、
制作そのものに興味がある方でないと、読むのはしんどいと思うが、
逆に興味がある方にはある程度参考になれば、と思いながら書きます。
(使用する材料)

使用する材料。
コラムとフォーク足、あとはエンド。
コラムはテーパード。
もちろんクロモリ。
多分、超がっちりとしたヘッド周りになるんだと思う。
パイプの選定は一点もののフレーム設計の際は毎回悩むが、
大事にしていることは、バランス。
例えば、カイセイ022のオーバーサイズのがっちりしたパイプで前三角を作って、
後ろ三角はコロンバススピリットの軽量管で作ったら、
乗った感覚は、前と後ろでちぐはぐになって、気持ち悪い感じになるだろう。
今回のフレームは大径なものの軽量管を使っているので、
その辺りどうなるか。
できたものを乗りこなしてみないとその辺りはわからない。
フォーク足もディスクブレーキ用のがっちりしたもので、
エンドは15㎜Eスルー。
今回の乗り手のスタイルからも、
このあたりはオーバースペックではないはず。
(火曲げの準備、パイプに蓋をする)

フォーク足の形状は、ベンド。
カーブや、凹凸面での追従性はストレートより、ベンドフォークの方が、
絶対にいい、と思っている。
普通、フォーク足を曲げるときには、
火曲げなんて方法はとらずに、ベンダーで曲げるが、
今回はフォーク足がごつくて曲げられないので、火で曲げる。
(曲がった足)

きれいに曲がった。
フォークオフセットを考慮しつつ、
曲げのフォルムも美しく、、真ん中あたりから曲げはじめ
先にかけてアールを徐々にきつくぐ~~っと。
(エンドをセットする)

治具上で、この曲げ具合で、
ちゃんと狙ったオフセットが出るか確認しつつ、
良ければロウ接してしまう。
(エンドをつけたフォーク足)

今回のフォークの肩下寸法は435㎜。
実は今回のフォーク足。
シクロクロス用に使われる想定の材料。
一般的なシクロクロスフォークの肩下寸法は390㎜程度で
この材料は少し短く、曲げ加工をしたら短くなった。
なのでエンドとは反対の肩側は、同じ材料の端材を継ぎ足す。
(端材部分)

本体と継ぎ足す端材。
これまた適当な端材を中継ぎとして中に挿入。
ロウがきちっと入っているか目視するために、
ドリルで窓を開けておく。
継ぎ目からロウを流し込んでいく。
(コラムと足をつなぐ部分)

次にコラムと、足をつなぐいでフォークの形にしていく。
つなぐ材料は1インチ径の1.0mm厚。
ちなみにこのクロモリ材料。
自転車フレーム専用品として売られているものではないが、
こういった強度と軽さが求められる部位でよく使う。
例えばステムの突き出し部分など。
ちなみにDIY大国のアメリカ。
こういった材料は割とよく手に入る。
日本では割と苦労する。
逆につい数十年前まで日本で盛んだった製造・加工業。
それらが残した小型の汎用機械類。
アメリカでは球数が少なく手に入れるのが難しいらしい。
多分、中古機械屋に行っても大きなものしかないんだろう。
(フライスでカット)

適当な角度でカットして、フォーク足につける。
コラム側もカットするが、
径の合う大きなホールソーがなかったので、
パイプとパイプを合わせ、
どこを切削すればいいのか確認しながら、
グラインダーとサンダー、そしてやすりで手加工していく。
慣れないと、そして丁寧にやろうとするとすごく時間のかかる作業になる
この突き合わせの加工。
基本的にフライスで行っているが、
道具が足りない場合、使えない場合はこのように手加工になる。
そのような場合に手早く作業するのに
こういう手技の習練が必要になるが、フレームを作るならこれは覚えておいた方がいい。
(カット前)

また、あたりがちな場所。
ディスクローターとフォーク足。
よくロードバイク用のフォークにディスクブレーキ台座をつけてほしいとのご依頼を頂くが、
ロード用のフォークは肩幅が狭いので、
ここのクリアランス確保のために、
エンド内側にワッシャーをはさんだり、
足に逃がし加工を施したりする。
(ディスクローターとフォーク足のクリアランスの確認)

(改めてジグにセット)

(本付け後)

本付けができた。
設計において、フォークとフレームのヘッド角の関係性は非常に大事なポイントで、
ここが適切でないと、他の要所が良くても、台無しになる。
全然走らない車体になる。
出回っている吊るしのフレームセットの中には、
この関係性がダメなものがたくさんある。
逆にフォークさえ良ければ、
まともになるのになぁ、なんてものもたくさんあるわけで、
こうして、テーパードコラムが手に入って、その手のフォークも作れるってことは、
今時のフレームにもそういった改善が出来るってことで、、
(ディスクブレーキ台座の取り付け)

(取り付け後)

ブレーキ台座の取り付けが完了。
先にも述べたが、
今回のフォーク足。
ディスクブレーキ用のごついもの。
ディスクブレーキ用といっても
通常のディスクブレーキでないロードやツーリング車にももちろん使える。
先日、ライトツーリング車の製作の相談を受けた際、
後ろには荷物を積まないが、フロントフォークにサイドバックとして5~6キロの荷物を
両サイドにくくりつけた状態で数日のツーリングをしたいとのこと。
その分載・重量設定なら、
パイプ選定はカイセイ022とかタンゲチャンピオンNo.2とかで過不足ないが、
フォークの足だけこういった頑丈なものをつけたら、
走りはよれずに、良いかもね。なんて話をした。
パイプの選定はやろうと思えば、
バリエーションはかなり作れるし、その辺りが面白くも難しくもある。
今度、機会をみて、
うちで取り扱いのある材料を中心にわかりやすく、紹介させてもらおうと思う。
(写真はTANGEのカタログの一部)

あとは、小物を付けていく。
今回の場合、フレームにはボトルケージは付けない。
フレームバックをほぼ必ずつける、
それから自転車を担ぐときにケージを取り付けるボス穴が、
肩の骨などに当たってしまい、痛いからだ。
ということで、
水分補給は基本的に、背中のハイドレーションからとる、
また無い場合には止まって補給するので、
フロントフォークの足にボトルケージのボス穴を取り付ける。
(適当な位置に6.5mmの穴を設ける)

ボス小物を穴に挿入し、ロウ付け。
ホースの受けも。
(ほぼ取り付ける物は全てつけた)

これでほぼ全て小物の取り付けは済んだ。
あと今回は補強ブリッジを入れる。
あまりこういうブリッジの入れ方はしないが、
乗り手の好みが、なるべくフォーク剛性は高めにということなので入れてみる。
(仮付けされたブリッジ)

(フォークの完成)

あとは下地処理→塗装となるが、
ここからは私の手を離れるので、工程は記載しない。
3回に渡って、一つのフレームを企画設計から、実際の工程を記したが、
製造そのものに興味がある方には、
少しでも参考になったのではないだろうか。
また、フレームの制作方法や、細かい手業、それから道具やジグ。
ビルダーによって全然変わるし、常に試行錯誤。
70歳を超える大師匠は、
「(ビルダー業において)俺は未だに進化しているよ!」とのことでした。。
これを見て、ビルダーやってみよ~て特異な方は
ぜひどうぞ。
フレームは出来上がったので、最後にフロントフォークだ。
ここまで、けっこう専門的な内容で
記事を書いてきたが、
制作そのものに興味がある方でないと、読むのはしんどいと思うが、
逆に興味がある方にはある程度参考になれば、と思いながら書きます。
(使用する材料)

使用する材料。
コラムとフォーク足、あとはエンド。
コラムはテーパード。
もちろんクロモリ。
多分、超がっちりとしたヘッド周りになるんだと思う。
パイプの選定は一点もののフレーム設計の際は毎回悩むが、
大事にしていることは、バランス。
例えば、カイセイ022のオーバーサイズのがっちりしたパイプで前三角を作って、
後ろ三角はコロンバススピリットの軽量管で作ったら、
乗った感覚は、前と後ろでちぐはぐになって、気持ち悪い感じになるだろう。
今回のフレームは大径なものの軽量管を使っているので、
その辺りどうなるか。
できたものを乗りこなしてみないとその辺りはわからない。
フォーク足もディスクブレーキ用のがっちりしたもので、
エンドは15㎜Eスルー。
今回の乗り手のスタイルからも、
このあたりはオーバースペックではないはず。
(火曲げの準備、パイプに蓋をする)

フォーク足の形状は、ベンド。
カーブや、凹凸面での追従性はストレートより、ベンドフォークの方が、
絶対にいい、と思っている。
普通、フォーク足を曲げるときには、
火曲げなんて方法はとらずに、ベンダーで曲げるが、
今回はフォーク足がごつくて曲げられないので、火で曲げる。
(曲がった足)

きれいに曲がった。
フォークオフセットを考慮しつつ、
曲げのフォルムも美しく、、真ん中あたりから曲げはじめ
先にかけてアールを徐々にきつくぐ~~っと。
(エンドをセットする)

治具上で、この曲げ具合で、
ちゃんと狙ったオフセットが出るか確認しつつ、
良ければロウ接してしまう。
(エンドをつけたフォーク足)

今回のフォークの肩下寸法は435㎜。
実は今回のフォーク足。
シクロクロス用に使われる想定の材料。
一般的なシクロクロスフォークの肩下寸法は390㎜程度で
この材料は少し短く、曲げ加工をしたら短くなった。
なのでエンドとは反対の肩側は、同じ材料の端材を継ぎ足す。
(端材部分)

本体と継ぎ足す端材。
これまた適当な端材を中継ぎとして中に挿入。
ロウがきちっと入っているか目視するために、
ドリルで窓を開けておく。
継ぎ目からロウを流し込んでいく。
(コラムと足をつなぐ部分)

次にコラムと、足をつなぐいでフォークの形にしていく。
つなぐ材料は1インチ径の1.0mm厚。
ちなみにこのクロモリ材料。
自転車フレーム専用品として売られているものではないが、
こういった強度と軽さが求められる部位でよく使う。
例えばステムの突き出し部分など。
ちなみにDIY大国のアメリカ。
こういった材料は割とよく手に入る。
日本では割と苦労する。
逆につい数十年前まで日本で盛んだった製造・加工業。
それらが残した小型の汎用機械類。
アメリカでは球数が少なく手に入れるのが難しいらしい。
多分、中古機械屋に行っても大きなものしかないんだろう。
(フライスでカット)

適当な角度でカットして、フォーク足につける。
コラム側もカットするが、
径の合う大きなホールソーがなかったので、
パイプとパイプを合わせ、
どこを切削すればいいのか確認しながら、
グラインダーとサンダー、そしてやすりで手加工していく。
慣れないと、そして丁寧にやろうとするとすごく時間のかかる作業になる
この突き合わせの加工。
基本的にフライスで行っているが、
道具が足りない場合、使えない場合はこのように手加工になる。
そのような場合に手早く作業するのに
こういう手技の習練が必要になるが、フレームを作るならこれは覚えておいた方がいい。
(カット前)

また、あたりがちな場所。
ディスクローターとフォーク足。
よくロードバイク用のフォークにディスクブレーキ台座をつけてほしいとのご依頼を頂くが、
ロード用のフォークは肩幅が狭いので、
ここのクリアランス確保のために、
エンド内側にワッシャーをはさんだり、
足に逃がし加工を施したりする。
(ディスクローターとフォーク足のクリアランスの確認)

(改めてジグにセット)

(本付け後)

本付けができた。
設計において、フォークとフレームのヘッド角の関係性は非常に大事なポイントで、
ここが適切でないと、他の要所が良くても、台無しになる。
全然走らない車体になる。
出回っている吊るしのフレームセットの中には、
この関係性がダメなものがたくさんある。
逆にフォークさえ良ければ、
まともになるのになぁ、なんてものもたくさんあるわけで、
こうして、テーパードコラムが手に入って、その手のフォークも作れるってことは、
今時のフレームにもそういった改善が出来るってことで、、
(ディスクブレーキ台座の取り付け)

(取り付け後)

ブレーキ台座の取り付けが完了。
先にも述べたが、
今回のフォーク足。
ディスクブレーキ用のごついもの。
ディスクブレーキ用といっても
通常のディスクブレーキでないロードやツーリング車にももちろん使える。
先日、ライトツーリング車の製作の相談を受けた際、
後ろには荷物を積まないが、フロントフォークにサイドバックとして5~6キロの荷物を
両サイドにくくりつけた状態で数日のツーリングをしたいとのこと。
その分載・重量設定なら、
パイプ選定はカイセイ022とかタンゲチャンピオンNo.2とかで過不足ないが、
フォークの足だけこういった頑丈なものをつけたら、
走りはよれずに、良いかもね。なんて話をした。
パイプの選定はやろうと思えば、
バリエーションはかなり作れるし、その辺りが面白くも難しくもある。
今度、機会をみて、
うちで取り扱いのある材料を中心にわかりやすく、紹介させてもらおうと思う。
(写真はTANGEのカタログの一部)

あとは、小物を付けていく。
今回の場合、フレームにはボトルケージは付けない。
フレームバックをほぼ必ずつける、
それから自転車を担ぐときにケージを取り付けるボス穴が、
肩の骨などに当たってしまい、痛いからだ。
ということで、
水分補給は基本的に、背中のハイドレーションからとる、
また無い場合には止まって補給するので、
フロントフォークの足にボトルケージのボス穴を取り付ける。
(適当な位置に6.5mmの穴を設ける)

ボス小物を穴に挿入し、ロウ付け。
ホースの受けも。
(ほぼ取り付ける物は全てつけた)

これでほぼ全て小物の取り付けは済んだ。
あと今回は補強ブリッジを入れる。
あまりこういうブリッジの入れ方はしないが、
乗り手の好みが、なるべくフォーク剛性は高めにということなので入れてみる。
(仮付けされたブリッジ)

(フォークの完成)

あとは下地処理→塗装となるが、
ここからは私の手を離れるので、工程は記載しない。
3回に渡って、一つのフレームを企画設計から、実際の工程を記したが、
製造そのものに興味がある方には、
少しでも参考になったのではないだろうか。
また、フレームの制作方法や、細かい手業、それから道具やジグ。
ビルダーによって全然変わるし、常に試行錯誤。
70歳を超える大師匠は、
「(ビルダー業において)俺は未だに進化しているよ!」とのことでした。。
これを見て、ビルダーやってみよ~て特異な方は
ぜひどうぞ。