とある方の膨大なビンテージ自転車コレクションを拝見させていただいた。
しかも試乗ありで。
途中で雨が降ったり、話に夢中で、
コレクション15台以上(すべてちゃんと乗れる状態で)の中から
数台しか写真に収められなかったのが残念。。
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クラウドバトラーのスピードツーリング車。
イングランドの古い(70年代に亡くなっている)ビルダーのもので、
ブランド後期にはハンドメイドから量産体制に切り替わったらしいのだが、
その切り替わり時期に生産されたものらしい。
ベルギーのナショナルカラーと、赤いフェンダーがまぶい。
ホイールは700cより大きな径の、、サイズいくつだっけ?
前が32ホール、後ろが40ホールの当時のイギリス車ではよくあるスポーク構成らしい。
大径でこのスポーク本数ならではのコシのある感じは面白かった。
フレームは前三角は頑丈に作られており(プレーン管?)、
フォークと、リアバックはすこし華奢な感じ。
ちょっと乗った感じはアンバランスに感じるが、
いろんな状況を走るうちにそれが良い個性となって出てくるのだそう。

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アレックスサンジェ
いわずと知れたフランス車といえば、、なアレックスサンジェ。
特有のぐっと延ばしたフロントセンター(BB-前輪ハブ軸)寸法。
乗るとザ、ツーリング車って感じ。
ぐーーっとスピードが乗っていく感じ。
フランスの国土にも色々と地形があると思うが、
ある方の話によると、このあたりの自転車の設計は
丘陵地帯、例えばツールドフランスなんかをみていると、
なだらかで退屈な地形が延々と続いている風景が思い出されるけど、
こんな場所を快適に楽に走るため、といったところからきているらしい。
もちろんもっと険しい山岳や街中も走るんだろうけど、主にそこに要点を置いて、
色々とバランスをとったらこんな形になったんだろうな。
あとはみんなフレームがでかい。
乗り手の身長が180cmに満たなくてもトップチューブ600mmちかく取る。
美意識もあるだろうし、フロントセンター寸法も稼げる。

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70年代のトーエイ
パっと乗ったときに、一番バランスがよく
ニュートラルだったのがこれ。すごく良かった。
クロモリがまだ高価だった頃、ハイテンション鋼で組んだモデル。
ハイテンション鋼は鋼材の一種で、一般構造用鋼材より強く出来ている。
クロモリに比べると粘り強さとか強度はおちるが、
それでも価格、強度のバランスの理由で愛用されたんだろう。
ヘッド角、シート角ともに72度のパラレル。
手で持つと激重いが、走るとその絶妙なバランスにびっくりする。
良質なハイテンション鋼、ジオメトリ、重さ、パーツアセンブル、、
すべてがマッチした乗り味、、惚れました。

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出所不明
すごく不思議なフレーム。
コンセプトがわからない。
ヘッドとシートがピストみたいに立っていて、
それでいてフォークオフセットは普通のツーリング車並にある。
なのでハンドルはぐりぐり回る。
作った人にどんな意図でこのフレームを作ったのか聞いてみたい。

温故知新というけれど、本当だなと思った。
自転車のフレームって数ミリ単位の設計の差異で本当に乗り味や挙動が変わる。
もちろん材料やその使い方、重量面なども大きくそれに影響する要点ではあるけども。
ジオメトリ・設計にもそれぞれの時代の常識が存在するようだ。
上記にあげたような自転車たちは2020年現在の、
少なくともメジャーな場所からは遠いところにいる。
マスメーカーはまず作っていない。
ビンテージというと意匠性ばかりが注目されがちだが、
ニューサイクリング(昔の自転車誌)世代のオーナーは実走派。
ジオメトリや走ったときの感覚を嬉々として語ってくれた。
そんな世代の方も高齢になってきているので、
そういった今のものだけを触っていては、中々得られない知識や経験もだんだんと貴重になるんだろう。
また、趣味の自転車を作るとか設計するとか企画するとかというのは、
本来すごくローカルなものなんだろうな、と。
アレックスサンジェにしたって、フランスの地を走るのに
いろいろと進化した結果、あの形なんだろうから、
日本でもそういったものがたくさん増えれば素敵だし、
説得力があろうってものだよな。