2017年08月02日

HG JAGER 制作記 ~ 前三角編


彼には以前に、パスハンターとして1台制作させてもらった。
HGパスハンター。

フルリジッドで王滝100㎞、、
2~300kmの弾丸ツーリング、、
そしてパスハンターらしく、8時間?の担ぎを含む山岳サイクリング。。

2年ぐらいたったかな?乗り込んでもらって、
本人があーしたい、こーしたいっていうのが出てきたので。
アップデートバージョンを改めて作らせてもらう。

命名、HG JAGER。ドイツ語で狩人。
ハンターよりワイルドかつ知的だ。

文章力の無い人間が、ブログで長文になると、
散文・雑文になると思うが、
制作コンセプトから設計、実際の工程を数回に分けて、
記載してみようと思う。




(HGからもらった草案)
ALP_JAGER1_草案-001


最初に草案をもらって、
二人で何度かミーティング。

上の草案からいくつか仕様やスケルトンを変更。
以下の仕様に落ち着いた。

(主な仕様・コンセプト)
・想定タイヤサイズ・・・700 x 35c、26 x 2.3inc、24 x 2.5inc

足回りは大分、、幅がある。
舗装路の長距離から担ぎ、シングルトラックまでこなす彼独特の仕様だ。
トラクションを良くするのに24インチの太いタイヤを使いたいというのも独特。

フレームの設計は、それぞれの想定タイヤを履かせたときに、
違和感がないように設計。

・リアバックは極力詰める。

トラクションを稼ぐため、また取り回しの都合上、
リアバックは410㎜とした。
太いタイヤとフロントギア・インナー28tと割と大きいので、
製図したところ、このあたりが現実的か。
頑張れば、405mmいけるかどうか。

・ヘッド周り大径化、スルーアクスルとディスクブレーキ

以前のパスハンターはカンチブレーキ。
トラブル時を考えてあえてリムブレーキにしていたが、
やはり雪道や状況により、ディスクブレーキが安定している。
ディスクブレーキなら、スルーアクスルにしない手はない。

フロントの剛性は高いものが好みなので1 1/8~1.5インチのテーパードコラム。
クロモリ製。
初めて使うが、持ってみると意外と軽い。

・なるべく軽く
用途を考えると、あまり薄いパイプは、、というのが本音だが、
メインチューブをプレステージジャパンの軽量管を使うことにした。
トップは曲げるので一回り肉厚だが。
BBシェルも普通より薄い。

薄肉は壊れやすいが、とりあえずこれで試してみて、
すぐ壊れるようだったらパイプを差し替える。
これができるのもハンドメイドの良さ。

リアバックに使うパイプは薄いものは、
今までの使用経験上、良い印象はないので
肉厚のオーバーサイズを使う。

・担ぎのためのフレームサイズ。
草案で指定されたシートチューブ長。
BBシェルの上端からシート集合部までの距離は350mm~360mm。

長時間担ぎ、その時の疲労や、岩場などでのバランスを考えると
この長さが彼にとっては非常に重要だそうだ。

また、ホイールベースも。
長すぎると、山道で担ぎながら体を旋回させると、
木にあたったり、岩にぶつかったりする。

乗った時のポジションはもちろんのこと、
この要素もフレームサイズを考えるとき、ひとつ基準になる。
山に入る人はこのあたりも少し考えてみてはどうだろうか。

ちなみに一口に担ぎといっても、状況によっても色々あるそうだ。
林道、緩い登り、急な登り、岩場、稜線。。
担ぎ方講習なんかやったらどうだろう。

・サスペンションフォークを入れたときに、操舵感を変えない。

デフォルトはテーパードコラムのリジッドクロモリフォーク。
ただ、状況によってはFOXの100mmトラベルのサスペンションフォークを入れる予定で、
それにしたときに、ヘッド角、BB高をあまり変えたくないということで、
それを加味した、フレーム・フォーク設計とした。

操舵感自体は機構が変るのでもちろん変わると思うが、
少なくともジオメトリ上は、各々のフォークを挿したときにずれが少ないように。

(ジオメトリ)
・700 x 35c
HG_disk_jager_v5_435-001.jpg

・24 x 2.5インチ
HG_disk_jager_v5_435_24inc-001.jpg

・FOX 100㎜トラベル想定
HG_disk_jager_v5_fox100mm-001.jpg



以上を踏まえ、、
スタ~トぉ!

(使用するパイプの一部)
左からBBシェル、フォークコラム、メインパイプ類、エンド類、ヘッドチューブ、アクスル
R0016781.jpg


何をするにもまずはBBから。
水抜きを開ける。

JIS規格の68㎜幅シェル。
外径は38㎜クロモリ鋼の軽量なもの。
通常は39㎜のクロモリ鋼。1㎜小さい。

1㎜の差は大きく、肉薄のものは、
ロウ付け時の熱により、歪みやすい。

熱を入れれば大なり小なりどんなものでも歪む。
組みつけの時にリタップして、ねじ山を整えるが、
歪みが大きいものをリタップするということは、たくさん肉を削るということで。

よって、ここは融点の高い真鍮ロウではなく、融点の低い銀ロウでロウ付けする。

(BBシェル)
R0016788.jpg

BBシェルにつけるシートチューブを、フライスでザグリ。
R0016791.jpg
R0016793.jpg



ロウ付けや溶接時、はんだ付けでもそうだけど、
母材に熱をいれると、すぐに表面が酸化する。

その酸化を防ぐために何らかの方法が用いられるんだけど、
ロウ付けの場合はフラックスという薬剤が使われる。

銀ロウ用のフラックスは、劇薬。
炎を充てると、すぐに気化したフラックスが目やのどを刺激する。
思わずむせ返る。


(銀ロウ)
シートチューブと銀ロウをロウ付けする。
R0016797.jpg


(ロウ付けされたBBとシートチューブ)
ちなみに、銀ロウは真鍮とは融解したときの特性が全然違う。
簡単に言うと盛れない、溶けてべしゃっと広がっていくので、
ボリューミーな接合部とはならない。カザーティみたいな。

あれはロウ付け時に2、3本の真鍮ロウ、もしくは線径の太いロウ材を一気に流し込んでいるんだろう。
R0016798.jpg


BBにシートチューブは付いた。
次はダウンチューブを付ける。



(ダウンチューブ)
タンゲ、プレステージジャパン。
肉薄の焼き入れ管だ。

プレステージは、接合部に使われる両端の肉厚が、0.7㎜。
真ん中の薄い部分は0.4mm。

オーソドックスなタンゲチャンピオングレードや、カイセイの022はこれが、0.9mmと、0.6㎜になる。

今回はプレステージの35㎜径の大径管を使う。
R0016939.jpg


製図して割り出した角度で、正確にざぐる。

溶接時、熱を入れた方向に、必ず引っ張られる。
これが正確でないと、狂いが大きくなり、矯正に苦労することもある。

逆にここにさえ、ちゃんとしていれば、自転車としての精度を出すことはそう難しくない。

R0016940.jpg


ジグにかけ、ロウ付けしていく。
R0016942.jpg


同じようにヘッドチューブもロウ付けしていく。

このヘッドチューブはヘッドパーツを変えることにより、
通常のオーバーサイズコラムから、ボトム側が1.5インチのテーパードコラムまで使用できる、便利なもの。

これがつけば、あとはトップチューブをつけると形になる。
R0016948.jpg



ところが、今回のオーダー。
担ぐときの肩にあたる部分、トップチューブのシート側、
そこを曲げてほしいとの内容。


パイプを曲げる場合、いくつか方法はあるが、
大径の場合、火で炙って曲げることになる。


(中に砂を詰めたトップチューブ)
火で炙る際、パイプがひしゃげないよう、
パイプ内部に隙間を極力無くし、砂をつめる。
R0017076.jpg


鉄板で蓋をする。
また、曲げる際に炙ったパイプは温度が上がり赤く柔らかくなる。

内部で高温になった空気が圧力を増し、柔らかくなった部分を押し上げてしまうので、
必ずガス抜きも開けておく。
R0017075.jpg


(火曲げ)
大きい火で、広い範囲を炙る。
R0017080.jpg


徐々に曲がっていく。
何度か曲がり具合を確かめます。

パイプは薄いので、力加減と火加減を間違えると割れるので、慎重に。

R0017087.jpg


目的の曲がり具合まで曲がりました。
焦げは取り除き、きれいにしておきます。
R0017089.jpg


さて、前三角最後のチューブ、トップチューブをロウ付けします。

本人の担ぎやすさを考えた、BB上端~トップチューブ下間、355mmにピタッと合わせる。
仮付け後、本付け。

(仮付け前のフレーム)
R0017090.jpg


三角の形になった。

ここでも行うが、こういった要所では必ず狂いが出ていないか、
治具上で確認していく。
狂いが出ていればその都度修正していく。

(本付け後)
R0017092.jpg



最後に、
このフレームフロントサスペンションがアセンブルされることを想定している。
ハンドルを90度以上切ったときに、フロントサスペンションの肩がダウンチューブに当たらないように、
少し上目に逃がしてある。

そのことによって、ヘッドチューブのボトム側の強度が落ちるので、
補強を入れる。


補強材は、メインパイプを切断したときに出た端材。
少し厚めの部分がいい。

それを形状に合うようマーキング、カットして成型する。

(補強に使うパイプ)
R0017093.jpg


成型はベルトサンダーなどで行う。
ピタッと合わせるのは結構難しい。

(成型された補強材をフレームにセット)
R0017094.jpg


(本付けされた補強材)
R0017095.jpg


後はロウ付けされた各所を仕上げていく。

まずは丸棒やすりで、荒目→細目→油目と番手を上げていき、
最後は布やすりで仕上げる。

この仕上げ作業は結構な手間だ。
ロウ付け時にいかに綺麗に、仕上げがしやすいようにロウを盛るかが、
時間短縮のポイント。


(仕上げ後)
R0017110.jpg
R0017107.jpg
R0017105.jpg
R0017108.jpg



ここまでで、前三角の製作は完了した。
この後は、後ろ三角の製作に入る。

実はフレーム製作においては、後ろ三角の方が大変なこと方が多い。
溶接箇所の多さや、曲げ・つぶし加工、ブリッジや台座類。
ホイールが入る場所でもあるので、精度だしにも気を使う。

次回以降は、その模様を綴っていこうと思う。























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